あなたは日本が投資で多額の黒字を稼ぎ出す国家に変貌を遂げていることをご存知ですか?

 

 近年よく「貿易収支の赤字が~年連続を記録しました」といったニュースを見聞きして、「本当のところ、今、日本の稼ぎはどうなってるんだろう?」と疑問に感じることがあります。

 

 他にも、

 

  • 貿易立国としての日本の状況はどうなっているのだろうか?
  • ニュースでは、国際収支、経常収支、貿易収支…似たような用語が出てくるけど、紛らわしいな。
  • そもそも日本の稼ぎ方が変わってきていることが自分と何の関係があるの?

 

 などなど、こういう大きな統計に関する話は解りにくかったり、身近なこととして捉えにくいものだと思います。

 

 でも、投資という観点から考えると、日本経済の稼ぎの現状を知り、うまくいってる分野とそうでない分野を認識することで大局的なお金の流れが見えてきます。

 

 投資で成功するためには、今、お金が集まる場所はどこなのかを見極め、そこへ資本を投じることでリターンを得るという思考が大事になります。

 

 そこで具体的な統計を見ながらマクロ的視点に立って、『日本の対外的な稼ぎ』について考えてみようと思います。

 

 ではまず、日本経済が海外から稼ぐ力の全体像を表す『経常収支』という統計を見て行きましょう、

 

 

日本の経常収支の推移は?

 

経常収支推移2017

財務省 国際収支の推移より

 経常収支という統計は、先述の貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支を合計したものです。日本のGDPの外需に等しいもので、日本経済の対外的な『稼ぐ力』を表します。

 簡単に内訳を説明しますと、

貿易収支:財(形のある商品のこと)の輸出から輸入を差し引いたもの。

サービス収支:外国人旅行客が日本で使った文化・娯楽費、宿泊料、飲食代、通信費などから、日本人旅行客が海外で使った費用を差し引いたものです。特許料や飛行機のチケット代なども含まれる。

第一次所得収支日本人(日本企業、日本政府などを含む)が外国から受け取った利子や配当などから、日本人が外国に支払った利子や配当などを差し引いた額。債券利子・株式配当金を計上する証券投資収益と日本企業の海外子会社からの配当金等を計上する直接投資収益を集計するのがここ。

第二次所得収支:日本政府が貧しい国などに援助をしている金額など。

 これらの内訳を表す用語はIMFのガイドラインによって度々更新されていくので専門家以外の人間には理解しにくいですが、大事なのは大まかな全体像をつかむことです。

 グラフを一べつしてすぐにわかることは、

 1996年から2016年まで一貫して日本は経常収支全体では常に黒字を継続し続けていることです。思い返すと、震災発生の年である2011年から貿易収支の赤字が拡大し始め、にわかに日本の『稼ぐ力』がどうなっているかに注目が集まり始めました。

 これは原発停止による石油、石炭等の鉱物性燃料輸入の大幅な増加世界的な原油価格の高騰という要因によるものです。

 その後、貿易収支の赤字がどう推移するかが心配されましたが、2015年には縮小に転じ、新しい統計によると2016年には大幅な黒字に転じました。シェールガス等の新規エネルギー開発ブームに起因する油の過剰供給がもたらした油価急落と円高による輸入価格の下落が影響しました。

 しかし、ここで最も注目されるのが第一次所得収支の黒字の拡大です。

日本は海外投資からキャッシュフローで稼ぐ国家へと変化しつつある

 第一次所得収支は2014年、2015年と連続で過去最大を更新しています。つまり、海外への投資からのあがりが、貿易収支の赤字を補うほどの稼ぎの柱として成長してきているのです。

 

 2008年のリーマンショック以降、長らく続いた歴史的円高局面において、日本からの輸出品が売れなくて苦しんだ日本企業は生き残り策として生産拠点を海外へと移転させました。その結果、2014年の日本の製造業の海外生産比率は約24%と過去最高を記録しています。中でも自動車など輸送機械は約47%に達しています。

 

 日本国内で働く人にしてみれば、「どうすんねん!」って話ですけど、現実問題としてこのような生産拠点の分散化と現地生産の流れは、企業経営の面から見ても、世界的な政治のトレンドから見ても抗うことの難しさを感じます。

 

 加えて、国内に人口減少問題を抱える日本企業は、海外企業に対してM&Aを行うことで新たな成長の伸びしろにしようとしています。日本企業が2015年に海外企業に対して行ったM&Aは件数が560件、金額は約11兆2000億円といずれも過去最高を記録しています。

 

 私が言いたいことは、これらの対外資産構築の積み重ねが、円安を迎えた現在、直接投資・証券投資からの収益の増加として実りの時を迎えているということなのです。

 

 海外資産からの収益が、円安による為替差益というブースターを介して膨れ上がり、日本の銀行口座に里帰りを果たしてくれているのです。

 

 

対外資産は増加の一途を辿っている

対外資産、負債、純資産

財務省  統計より

 フローである経常収支が黒字であることが、ストックである対外資産を増加させています。

 

 2015年末の日本企業や政府、個人が海外に持つ対外資産残高は約949兆円です。これも過去最高を記録しています。資産から負債を引いた対外純資産は25年連続で世界一位です。

 

 もちろん、稼いだ利益を日本国内ではなく海外に投資しなければならない状況は、国内市場に魅力がないからとの見方もできますが、対外純資産とは日本が世界中に持つ財産な訳であり、それらの資産が生み出すキャッシュフローが日本経済を極めて安定的に潤し続けていることもまた事実なのです。

 

 国家は経済成長を果たすと貿易が赤字化しやすくなり、投資からの収益が増加する。どうやらこれは国の発展段階として自然なことのようです。

 

国際収支の発展段階説が示す日本の稼ぎ方

 経常収支には、国の発展段階によっていくつかの異なる段階があるという有名な学説があります。以下がその段階です。

 

  1. 未成熟な債務国、成熟した債務国: 国の発展の初期段階で、産業基盤がなく輸出するものがないので海外からの資本に頼るので経常収支は赤字となる。対外純資産はマイナス。若者のような低開発国の段階。
  2. 債務返済国 : 工業生産力が高まり、貿易収支が黒字化し、経常収支も徐々に黒字化する。対外純資産がプラスになる。壮年期のような新興国の段階。
  3. 未成熟な債権国 : 工業生産力がピークを過ぎ、若干衰えが見える段階。貿易・サービス収支は依然黒字であり、所得収支が黒字化し、債権国となる。対外純資産は大きなプラス。中年期のような国であり、先進国の仲間入りをする段階。
  4. 成熟した債権国 : 貿易収支が赤字化する。しかし、所得収支の黒字額が貿易・サービス収支の赤字を上回るので、経常収支は黒字を維持するが黒字額は縮小する。対外純資産はプラスだが増加が鈍化する。中高年期のような国の段階。
  5. 債権取り崩し国 : 貿易収支の赤字が多くなり、経常収支も赤字に転ずる。対外純資産は縮小に転じる。貯蓄を取り崩して生活を行なっているような成熟した国の段階。

 

 

 現在、日本は『成熟債権国』に分類されることが多いようです。確かに、まさしく当てはまるという感じですよね。

 

 ここまで書いてきて私が思うこと。それは、

 

 過去にうまくいったことに執着して、今思うように行かないと嘆くのではなく、大きな変化のうねりの中にある日本国経済の現状を正しく理解し、国家として成熟することで手にした新たな強みを生かしていくべきだということです。

 

 現状、日本の家計は、金融資産1700兆円というとてつもなく強力な兵器をまだまだうまく活用できていません。たとえば、この1700兆円を運用したとして、平均運用収益が1%上昇すれば、年間17兆円もの収益が家計に発生することになるのです。

 

 しかし、現状はタンス預金のまま手付かずで放置していたり、金利ゼロのまま銀行預金にしてただ眠らせているだけというケースがまだまだ多いのです。

 

 そのような状況から脱却し、資産からの収益が国民一人一人の人生をよりダイナミックなものにする時代が到来しつつあるのだと思います。

 

 

コメントを残す